日本の歴史4 平安京(中公文庫) 読書ノート

中公文庫の「日本の歴史」シリーズは、この種の全集本としては史上空前のベストセラーと言われている(といっても50万部くらいだが)。新シリーズの出た「世界の歴史」とは対照的に、こちらは昔のままの内容で最近も文庫の新装版が出るくらいで、まさに定番中の定番という感じだ。

僕にとっては何と言っても古い中公文庫版が懐かしく、高校時代には全巻揃えたかったのだが、数十年前の当時でも一冊六百円以上するのでとても買えなかった。今になって、中古で安く出回っているのを週一冊ペースで購入して喜んでいる。高校時代、土曜日の放課後になると漫画を買って帰りに読むのが楽しみだったのを思い出す。まったく、人生も高校時代からやり直すべきなのだろう。

 

さて、この巻ではいよいよ千年の都・平安京に遷都した。

いかにも華やかな印象のする平安時代だが、その初期はひたすらに暗い。まず中央の朝廷では、藤原氏の初期摂関政治が開始されようとしている。このやり口がすさまじく、政敵を陥れて左遷させるエピソードが連発される。罠にかかった側は、もはや絶対に言い逃れできないようで、しかも無実の罪であることが当時から見え見えなのが怖い。

地方では受領による収奪が過酷をきわめ、土豪や農民との間に対立が深まってゆく。農民側は税を逃れるために土地を貴族や寺社に寄進する。こうして班田収授法が崩れ、残った口分田に受領の締めつけがさらに厳しくなるという悪循環。

しかも、受領の尻をたたく中央貴族は、裏では地方農民から寄進を受けているのだ。さらには任期を終えた受領は地方に土着して有力な豪族となり、新しい受領と対立する側にまわる、というこの構図の奇怪さ、複雑さ。

 

ようするに、古代律令制が崩壊してにっちもさっちもいかなくなった時代であり、肝心の藤原氏の基本政策が「事なかれ主義」なんだから、これは読んでいて暗澹たる気分になる。

それでも、この一冊が圧倒的に面白くなっているのは、冒頭と終盤に痛快エピソードが描かれているためだ。

まずは東北の蝦夷を征伐した坂上田村麻呂の一席。この人はなかなか剛毅な武人であったようで、まるで古代神話の征伐エピソードがよみがえったような鮮やかさである。のちに坂上田村麻呂が老躯を引っさげて政権の中枢に座したことは、不安定な政界のひとつの重石になったのではなかろうか。

そして、終盤には平将門と藤原純友の乱が勃発する。僕の子供の頃には大河ドラマ「風と雲と虹と」でおなじみだった。やはりこのエピソードは圧倒的に面白く、古代の終末を飾る騒乱という感じがする。

 

摂関政治は藤原良房・基経父子が開始した、というのが教科書で習った事項である。というか学校ではそれしか習わないのだが、終始事なかれで自分の地位を固めることしか興味のなかった良房に比べると、基経はいろいろな専門家の意見を聞いて適格な手を打つことのできる、なかなかの切れ者だったようである。

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